かな文字、書きたい
子どもの頃、問答無用でお習字教室に通わされた
多分、ママ友付き合い事情もあったのだろうと想像できるが
じっと座っている時間が、退屈で苦痛だった
そんな様子だから、後から習い始めた同級生にも
どんどん追い越され、周りが1級、初段になる時にもまだ
3級あたりをうろうろしていて、恥ずかしかった事を覚えている
「習字教室、いつまで行くの?」
いやいやオーラを出してそう訊ねたら、母はつれなく
「お免状もらったら、やめていいよ」と言い放った
お免状って
そんなの欲しいって思ってないし
そもそも、じっと座るの苦手だし
あの子みたいに上手く書けないのに、なに言ってんだか
高学年の女児と母の葛藤を見ていた先生は
親子喧嘩の折り合いをつけることにしたらしく
「ゆめちゃんは、硬筆や毛筆じゃなく、かな文字が向いてるかもね」と方針変更を提案してきた
人と比較されてやる気がなくなるタイプなので
誰も同じことをしていない「私だけの習い事」は
当時の私の小さなプライドを保ってくれたおかげで
無事、師範免状を受け取るまで続けることができた
百人一首の歌の内容と、かな文字が
恋に憧れる私の興味対象であったことにも助けられた
いやいや続けた書道教室だったけれど
年始になると、墨を擦って、筆を持ちたい気持ちになる
十代、二十代の時にも
時々、筆を持って自分を落ち着かせる時間があった
子育てと仕事に追われる生活になって
その時間は、自然となくなっていった
そして今
ひとりの時間を存分に味わいながら
もう一度、筆を持ってみたいと思い始めている
闘病中だった祖母のために書いて喜ばれた写経
お寺さんへの表書きは、いつも私の仕事だったこと
思い出しつつ、もう一度
ゆっくり半紙に向かいたい気持ちが湧いてきた
墨の香りを感じながら
もう一度
筆を、持ちたいなあ
